
作品解説
「ブラックホールの夢」は、重力によってすべてを引き寄せ、飲み込む“見えない力”をテーマに制作したアブストラクト作品です。
作品の中心に描かれた深い黒は、ブラックホールそのものを象徴しており、そこに向かって流れ込むような色彩のうねりは、私たちの思考や感情が引き寄せられていく様子を表現しています。
ただし、この“ブラックホール”は恐怖や無の象徴ではなく、「夢」という言葉を通して再構築されたものです。夢の中のような曖昧で、でもどこか懐かしい空間。引き寄せられながらも心地よさを感じる、不思議な感覚を表しました。
制作背景/コンセプト
この作品を描いた当時、私は「抗いきれないものにどう向き合うか」というテーマに取り組んでいました。
それは、時間であったり、変化であったり、感情そのものだったりします。
どんなに抗っても流れていくものに対して、私たちは無力であると同時に、流れに委ねることで自由になることもできる――。
そんな思索の中から、この作品が生まれました。
「ブラックホール=破壊」ではなく、「夢=再構築」と捉え直すことで、内なる再生の可能性を探っています。
技法・マテリアルについて
本作では、アクリルポーリングという流動的な表現技法を用いています。
この技法では、絵の具を“描く”のではなく、“流す”ことで偶発的な造形と色の混ざり合いを生み出します。
流動は一度始まると途中で完全には制御できないため、直感と準備、そして“流れに委ねる覚悟”が求められます。
ブラックとメタリックゴールドをベースに、ブルーやピンク、ホワイトといったコントラストの強い色彩を複数レイヤーで流し込み、重力と表面張力により自然なグラデーションと渦を生み出しています。
それにより、幻想的でどこか宇宙的なスケールを持つヴィジュアルが完成しました。
YUJI HARADA からのメッセージ
この作品は、観る人によってまったく異なる解釈が生まれることを願って制作しました。
「引き寄せられる感じ」「吸い込まれる不思議な感覚」「心の深層を覗いているような静けさ」など、自由に感じ取っていただけたら嬉しいです。
「ブラックホールの夢」が、あなた自身の“内なる宇宙”を少しでも映し出す一枚となれば幸いです。
【Art】YUJI HARADA
“Dream of a Black Hole – English Version”
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